お子さんが学校に行けなくなったとき、多くの保護者の方がまず感じるのは「どうすれば学校に戻れるんだろう」という焦りではないでしょうか。
でも、不登校のこどもたちの状態は本当にさまざまです。家から一歩も出られない子もいれば、買い物には行けるけれど学校には足が向かない子、登校はできるけれど教室には入れない子もいます。
「学校に行く・行かない」の二択ではなく、その間にはいくつもの段階がある。 そして、段階ごとに必要な支援も居場所も違う——これが、不登校支援を考えるうえでいちばん大切な視点だと私は思っています。
大田区教育委員会が2025年11月に更新した「大田区不登校児童・生徒支援及び学びの保障ガイド」は、まさにこの考え方でつくられた資料です。ただ、支援の体制がきめ細かいぶん、初めて読む方には少し複雑に感じられるかもしれません。
今日はこのガイドを、できるだけわかりやすく読み解いていきたいと思います。
不登校は「問題行動」ではありません
まず大前提として。大田区も明言しているとおり、不登校(登校しぶり)は問題行動ではなく、どのこどもにも起こり得るものです。
ガイドの冒頭にはこう書かれています。不登校の要因や状態、ニーズ、求める学びの場はさまざまであり、ひとつの支援で解決できるものではない——だからこそ、一人ひとりへのアセスメント(状況の見立て)と、多様な学びの場の充実が必要なのだ、と。
私がこのガイドを評価しているのは、まさにこの点です。「とにかく学校に戻そう」ではなく、こどもの今の状態を出発点にして、そこに合う居場所を用意する。大田区は、とても誠実にこの居場所づくりに取り組んでいます。
こどもの状態を7つの段階で見る
ガイドの中心になっているのが、2枚の「早見表」です。
こどもの状態を、たとえばこんなふうに7つの姿で示しています。
- 家でもほとんど自室から出られず、生活リズムも乱れている
- 家では安定して過ごせているけれど、外出は難しい
- 散歩や買い物には出られるけれど、決まった居場所や学びの場には通えない
- 学校には行けないけれど、フリースクールなどには定期的に通えている
- 週の半分くらい欠席している。または毎日登校していても別室・保健室で過ごしている
- 週1〜2回の欠席や遅刻があり、保健室や別室を利用している
- ほぼ通常どおり登校できている
「うちの子は今、このあたりかな」と現在地を確かめて、表を下にたどっていくと、その段階で必要な支援と、対応してくれる機関がわかる仕組みです。

たとえば、家からほとんど出られない段階なら、まず最優先は生活リズムと心の安定。在籍校の担任の先生に加えて、スクールソーシャルワーカーや医療機関がチームになります。外出はできるけれど居場所に通えない段階なら、家庭の外に安心できる居場所をつくる支援へ。段階が進むにつれて、支援のかたちも変わっていくのがこの表から見てとれます。
「学びの保障」も段階ごとに用意されています
もう1枚の早見表は、「学び」の側から見たものです。

家から出られない段階では、オンデマンド配信授業や学習資料のポスティング。外出できるようになったら、自習スペースや体験活動。学校に近い環境で学びたくなったら、つばさ教室やみらい学園——というように、こどもが「学びたい」と思ったタイミングを逃さず受け止められるよう、段階ごとの選択肢が並んでいます。
ここからは、それぞれの居場所を順番にご紹介します。
① 家から出るのが難しいとき:VLP(バーチャルラーニングプラットフォーム)
自宅を出ることが難しいこどものために、タブレット端末から利用できるオンラインの仮想空間です。オンライン授業の配信やドリル学習だけでなく、カウンセラーとのオンライン面談もできます。
「学びたい」「誰かとつながりたい」と思ったときに、自分の部屋から最初の一歩を踏み出せる場所がある。これはとても大きなことだと思います。
実はこのVLP(在宅の不登校児へのオンライン授業)については、私自身も議会で取り上げ、その整備を求めてきました。質問の様子は、こちらの動画でご覧いただけます。
わたしの子が小学校1年生で不登校となった際に、強く願っていたことは、このオンライン授業でした。
物理的には可能であるはずなのに、どうして学校でしか授業が受けられないのだろう?
教育を受ける権利は、憲法第26条で保障されているのに、なぜ??
そのための環境整備が必要なのではないだろうか、という思いからです。
質問内でもお話しておりますが、ここ大田区で実現したことが、心の底からうれしいです。

② まずは相談から始めたいとき:教育センター教育相談室
元教員の教育相談員や心理相談員が、こどもの状況と保護者の思いを聞き取り、関係機関や在籍校との連携について助言してくれます。家庭の事情で登校が難しい場合には、社会福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーにも相談できます。
「どこに相談したらいいかわからない」というときは、まずここに電話してみてください。


③ 学校以外に通える場所がほしいとき:つばさ教室(教育支援センター)
心因的な理由などで登校できなくなった小・中学生が通う「教室」です。少人数のあたたかい雰囲気のなかで、自主学習や体験活動を通して、自立心や集団生活への適応力を育みます。
対象は区内在住の小学4年生から中学3年生まで。現在、池上・蒲田・羽田・大森・調布の5教室が開室していて、区内のどのエリアからも通いやすくなっています。

④ 学校に近い環境でじっくり学びたいとき:みらい学園(学びの多様化学校分教室)
不登校のこどもたちの実態に配慮した特別な教育課程を、国に認められた学校です。大田区には、大森第四小学校を本校とするみらい学園初等部(小4〜小6)と、御園中学校を本校とするみらい学園中等部(中1〜中3)があります。
少人数でのきめ細かな指導と、ゆとりある生活時間が特徴。在籍校には人間関係などの理由で戻りにくいけれど、学校に近い環境で他者と交流しながら学びを深めたい——そんなお子さんの選択肢です。
■大田区公式:大田区の学びの多様化学校「みらい学園」についての情報をお探しの保護者様

みらい学園中等部については、令和5年度決算特別委員会内で質問をしていますので、ご興味あればご覧ください。
みらい学園のモデルとなった高尾山学園、調布市のはしうち教室への視察をもとに質問を行っています。
大田区における不登校の児童・生徒の傾向、定員オーバーだった場合の入室希望者の取り扱い、不登校対応される先生方への専門的知見からの支援体制、みらい学園卒業後のこどもたちの進路について質問しています。
⑤ 学校には行けるけれど教室がつらいとき:別室登校(サポートルーム)
在籍校の中に、教室とは別の居場所を用意する仕組みです。自習をしたり、教室の授業のオンライン配信を視聴したりしながら、自分のペースで過ごせます。お問い合わせは在籍校の担任の先生や副校長先生へ。

⑥ 中学校を卒業した後も、切れ目なく
不登校の支援は、義務教育で終わりではありません。
こども・若者のための「第3の居場所」であるフラットおおた、中高生が集まれる中高生ひろば蒲田・中高生ひろば羽田など、卒業後に利用できる相談支援や居場所もガイドに掲載されています。ひきこもりに悩むご本人・ご家族のための相談室SAPOTAや、学び直しのための夜間学級の案内もあります。
実は私は、地域産業委員会に所属していた際、フラットおおたが大森駅前から仮移転すると報告を受け、「通いなれた場所が変わることは、こどもたちにとって大きなストレスになるのでは」と心配して質問したことがありました。その後、先日の文化祭で実際に足を運び、和室やミニ菜園のある自由な空間でのびのびと過ごすこどもたちの笑顔を見て、心から安心しました。「ずっとここがいい」というこどもたちの声が、この居場所の温かさを物語っています。そのときの様子は、こちらの記事にまとめています。



⑦ フリースクールの利用料には助成も(東京都事業)
フリースクール等に通う不登校のこどもについて、利用料の助成事業が令和6年度から実施されています(こちらは大田区ではなく東京都の事業です)。詳細は在籍校を通じて案内されているほか、大田区教育委員会のホームページにも掲載されています。

■大田区公式:フリースクール等民間事業者を利用する際の助成金についてお探しの保護者様
(東京都が実施している助成金事業に係る資料へのリンクです。)
【別紙2】東京都フリースクール等利用者支援事業における手続きの流れ(PDF:310KB)
【別紙3】東京都フリースクール等利用者支援事業助成金のご案内(PDF:517KB)
■東京都公式:東京都フリースクール等利用者支援事業助成金
⑧ 発達障害が背景にあるとき:さぽーとぴあ(障がい者総合サポートセンター)
不登校を考えるうえで、見落とせない視点があります。それは、発達障害の「二次障害」として不登校が現れることがある、ということです。
たとえば、感覚の過敏さや、まわりとの感じ方の違いから、学校という環境で人一倍がんばり、知らず知らずのうちに心や体に負担を抱えてしまう。その結果として、学校に行けなくなる——というケースは決して珍しくありません。こうした場合、「学校に行く・行かない」だけを見ていても、こどもの本当のしんどさには届きません。
だからこそ、背景に発達特性があるかもしれないと感じたときは、小児科やかかりつけのお医者さんに相談することが大切な一歩になります。医療的な見立てがあると、こどもに合った環境の整え方や支援の方向性が見えてきます。
大田区では、学齢期の発達障がいのあるお子さんを対象に、**さぽーとぴあ(大田区立障がい者総合サポートセンター)**が相談や支援を行っています。また、在籍校の養護教諭や特別支援教育コーディネーターも相談に応じてくれます。

⑨ 家庭ごと支えてほしいとき:子ども家庭支援センター
不登校は、こどもだけの問題ではなく、家庭全体に大きな影響を及ぼすものでもあります。
たとえば、お子さんが家にいる時間が増えることで、保護者の方が仕事を続けられなくなり、収入や生活の不安が重なってしまう。こうした「不登校をきっかけに家庭全体が揺らぐ」状況は、本当に多くのご家庭が直面しています。こどもの居場所と同じくらい、保護者自身が相談できる場所が必要なのです。
そんなとき、まず頼ってほしいのが子ども家庭支援センターです。18歳未満のお子さんとその家族に関することなら、子育ての悩みから家庭の事情まで、何でも相談できます。匿名での相談も受け付けていますので、「こんなこと相談していいのかな」と迷わず、まず声を届けてみてください。

おわりに:ひとりで抱えこまないでください
こうして並べてみると、大田区の不登校支援は「家の中」から「学校の教室」まで、そして「義務教育のその先」まで、こどもの状態の段階ごとに、きちんと居場所が用意されていることがわかります。
複雑に見えるのは、それだけきめ細かいから。そして、どの段階のこどもも取り残さないという、区の誠実な姿勢の表れだと私は受け止めています。
わたしは、実際の不登校児当事者の親の経験から、この大田区の対応は非常に高く評価しています。
こどもたちの個々の状況に合わせ、学校の枠組みに合わせるのではなく、こどもたちの状況にあわせた形で、可能な限り居場所づくりを行っており、どのような形でも、学校とつながっていてほしい、というあたたかな思いやりを感じます。
わたしのこどもの不登校時代とは大きく様変わりしていると感じるのは、不登校児童が全国で35万人という事実を社会全体で受け止め、向き合ってきたからこそ、このように課題解決とともに具体的な施策が行われているのではないかと感じています。
もちろん、まだまだ課題は残っています。(小学校低学年の居場所づくりなど)それでもここまで大田区の不登校に悩めるお子さん、保護者の皆様の声に誠実に寄り添っているのは事実であるとわたしは感じています。
もしお子さんのことで悩んでいたら、どうかひとりで抱えこまないでください。「うちの子は今どの段階かな」と早見表を眺めてみるだけでも、次の一歩が見えてくるはずです。
そして、「電話はちょっと勇気がいる」という方へ。メールやチャットで相談できる窓口もあります。こどもが寝たあとの夜の時間に、自分のペースで言葉を整理しながら——そんな相談のしかたも選べますので、記事末尾の一覧をぜひ参考にしてください。
詳しくは、大田区の「不登校児童・生徒支援及び学びの保障ガイド」(PDF)をご覧ください。
▶ 大田区不登校児童・生徒支援及び学びの保障ガイド(PDF) https://www.city.ota.tokyo.jp/kyouiku/gakukyou/futoukou-nayami.files/R7.11.27_manabino_hosyougaido_2025Ver.pdf
▶ 大田区「不登校にお悩みの方へ」(関連資料がまとまっています) https://www.city.ota.tokyo.jp/kyouiku/gakukyou/futoukou-nayami.html
電話がしづらいとき・夜に相談したいとき
「電話はちょっとハードルが高い」「こどもが寝てから、夜に落ち着いて相談したい」「こどもに聞かれたくない話がある」——そんなとき、メールやフォーム、チャットで相談できる窓口もあります。
- 教育センターのメール相談「心の輪」:学校生活や生活面の悩みを、メールで相談できます(kokoronowa@city.ota.tokyo.jp)。小中学生本人からの相談もOK。※やりとりは1回のみなので、継続的な相談は電話・来室へ
- 子ども家庭支援センター:区ホームページの問い合わせフォームから連絡できます。匿名での相談も受け付けています https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/kodomo/shien/kateiCenter_kaisetsu.html
- フラットおおた:チャット相談(リアルタイムでスタッフが返信)、メール、問い合わせフォーム、LINEと選択肢が豊富です(https://www.flatota.space/howto)
- SAPOTA:メール(contact@sapota.or.jp)またはホームページのメールフォームから相談できます(https://www.sapota.or.jp/)
- ギュッとチャット(東京都):18歳までのこども本人と、その保護者が使える匿名・無料のチャット相談。**毎日15時〜24時(受付23時30分まで)**と、夜の時間帯にも対応しています(https://gyutto-chat.metro.tokyo.lg.jp/)
- 相談ほっとLINE@東京(こども専用):小中高生本人がニックネームで相談できるチャット窓口。通年15時〜23時
主な連絡先まとめ
| 居場所・相談先 | 電話番号 | 電話以外の相談方法 |
|---|---|---|
| 教育センター教育相談室 | 03-5748-1201 | メール相談「心の輪」kokoronowa@city.ota.tokyo.jp(1往復のみ) |
| 子ども電話相談(小中学生本人向け) | 03-5748-1203 | — |
| スクールソーシャルワーカー | 03-6410-4141 | — |
| みらい学園 初等部 | 03-6404-8339 | — |
| みらい学園 中等部 | 03-5755-3783 | — |
| VLP・みらい学園の手続き等(教育委員会指導課) | 03-5744-1435 | — |
| フラットおおた | 03-6451-8433 | チャット・メール・フォーム・LINE(flatota.space) |
| 中高生ひろば蒲田/羽田 | 03-6715-8308/03-6423-6285 | — |
| ひきこもり支援室SAPOTA | 03-6459-6715 | メール contact@sapota.or.jp/HPのメールフォーム |
| 夜間学級(学務課学事係) | 03-5744-1429 | — |
| 子ども家庭支援センター | 03-5753-7830 | 区HPの問い合わせフォーム(匿名相談OK) |
| さぽーとぴあ(発達障がい相談) | 03-5728-9433 | — |
| ギュッとチャット(東京都・保護者も可) | — | 匿名チャット 毎日15時〜24時 |
※本記事は2026年7月執筆時点の情報をもとにまとめています。制度の内容や連絡先は変わることがありますので、最新の情報は各機関や大田区のホームページでご確認ください。また、内容に誤りやお気づきの点がありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。
